塾の帰りに雪が降って、そしたらみんなの一番後ろにいた僕に向かって、君は一番に笑いかけてくれたね。
思い出せたのはそれが最後で、だから僕はそれっきりずっと眠りっぱなしなのかもしれない。教室にいたって誰も起こしちゃくれないんだ。
もう子供じゃないんだから、一人でも起きれなくっちゃね。
そうだろ?
……でもしかたない、今は眠くてたまらないんだ。
……。
僕はこれから君への贈りものを探しにいこう。どれぐらいかかるのかわからないけど、君にあげようと思った。君の誕生日に間に合うかな?どうだろう。
できれば君が好きなものを教えてくれたら助かるんだけど、君はいつだって君のことを話さない。
それもひっくるめて、贈りものを君にあげたいと思った。
……。
君が君の本当に話したいことをようやく僕に話してくれたのはいつだったろう?
あそこの国では、秋が春だ。
全部終わって、くたびれはてた僕を連れて君は河原に向かった。
暑さもどこかへ行ってしまって、川には散った紅葉が浮かんでいた。入道雲はもう溶けてなくなってしまった。
君は僕の手を引いて、河原に腰を下ろした。僕も下ろした。
そこから二人で空を眺めた。
入道雲はもうなくなっていた。もう何もなかった。
だから僕はもう表情を失っていた。それをコントロールする力も残っていなかった。そんな僕に君はキスしてくれた。長いキスだったけれど、僕にはもう泥にまみれた河原しか想像できなかった。
どこか遠い街のことをよく覚えている。僕の町にある山の頂上から眺めて、ようやく見えた遠い街。それは砂漠と深い川の向こうにあった。
いつかあそこに行こうと思っていた。あそこには僕を傷つけた人々がいる。そこにいる人々ひとりひとりの顔を拝みにいくのだ。
そう思っていた時もあったけれど、そうじゃなかった。結論から言えば、僕もまた遠い街のひとりひとり全員を傷つけてもいた。
君もそのひとりだった。キスをしながら、君の背後にすべてが枯れた砂漠が見える。風に吹かれて骨が転がる砂漠。
それが見えた時にはもう手遅れだった。気づくと僕は遠くへ逃げていた。
誰もいない、君もいない、動物もいないし川もない、深い森の奥の奥の方へ、もっともっとさらに遠くへ……。