俺の頭上にはいつも太陽があって、それはどんな天気でもどんな夜でもどんな気分でもたしかにそこにあったが、そのことに気づいたのはついこないだのことだった。 船の上で仰向けになって考えた。目の前にある太陽が俺の視界を焼いているのが心地良い。
実際のところ、歩くことが嫌いだったことに気づくのに二十年はかかってしまった。どれだけ歩けど歩けど、俺はいつも立ち止まって座る場所を探してしまうんだ。俺は汗っかきで、くせっ毛で、どんくさくて、太っちょだからすぐに息が切れて、水筒を飲んで膝から崩れ落ちていたものだった。
いつだったか、俺は叔父に誘われて船に乗った。
それが初めての船で、初めての海で、初めての潮風でもあった。それまでに二十年はかかってしまった。
今はどうだろう。陸で住んでいる期間より、海で住んでいる期間の方が長いに違いない。もう何十年と地に足を着けていない。俺はずっと船の上でただよっている。
海はいつも教えてくれた。俺はいつ、どこにいっても一人のままだと。だから俺はずっとここでただよっていようと決めた。
今日は波が強かったから、空が揺れた。太陽も揺れた。
俺はただそれをみるだけだった。
俺はどんな表情をしているだろう。
どこかでウミネコの鳴き声が聞こえた。
波の音は心臓の鼓動のように、すでに俺の中で響いている。
少し太陽が傾いた気がした。そろそろ正午も過ぎる頃だった。
上体を起こして、水平線の方を見た。俺以外にも、いくつかの船がただよっていた。その船たちがこちらへやってくるのを待った。
俺の船はゆったりと揺れ続けていたが、それにはもう慣れていた。今の俺にはそれがないことは考えられなかった。たとえば、生活の中の白湯のように。
俺が陸地を離れた日のことは今でも覚えている。
とても晴れた日、俺は太陽の真下で絶望に暮れていた。叔父がボートの縄を解き、俺はただそれを見ていた。叔父は何も言わず、俺も何も言わなかった。それがありがたかった。きっとなにか一言でも言われたら、俺はもう立ち直れなくなってしまっていたと思う。俺は俺の綺麗な裸足が恥ずかしい。
船を出す準備ができると、俺は一人で乗り込んだ。
俺の影は短い。見上げると叔父がこちらを見下ろしていた。
叔父の顔は影で覆われていた。苦しみと悩みを重ねたその表情には愛を感じられた。叔父はしっかりと俺を見つめて、うなずいてくれた。俺もうなずいた。
空は雲ひとつなく、日差しから逃れられるすべは何もなかった。俺も叔父も、白昼の元晒されていた。
空を見上げると青い空があった。
やってきた道を振り返ると、真っ白な砂浜があった。
船の行先を見ると、青い海があった。
これほどまでに美しい世界の中で、俺は絶望の只中にいて、そして進むしかなかった。