一
かつてはまっしろだったであろう壁が鬱蒼とそびえたっている。歳月を経て翡翠のような汚れに覆われている。その模様はどこかにある湾岸の地図のようでもある。翡翠の大陸に、わずかに残された白と灰色の大洋。その上のレイヤーでツタ科の植物が手を伸ばしている。壁よりも鮮やかな緑と黄色で庭の始まりを予感させる。ツタ科の植物はまだまだ短くて、壁の天辺から少しこぼれるように垂れている。これからもっと下へ行こうという意志を感じる。それをされるがままにして、大胆不敵にただそこにそびえている壁。
壁には一箇所だけ穴がある。翡翠の汚れの中に一つはがれた部分、彩度の落ちた緑のコンクリートが見えている。その先には真っ暗い穴。何があったのだろう。
二
庭の通路は折り戸がいくつも連なっている。格子状の模様が施された折り戸は、その模様の隙間から光が見える。折り戸の向こうには、大きな門が見える。壁のように老朽化した門。どっしりとした門のボディはその劣化を自分のものにしているみたいで、、やはり壁のように、汚れや剥がれさえも貫禄がある。少し見上げると、門の上にも装飾が施されている。全体的に質素でシンプルな門だったが、装飾の一つ一つはしっかり手が込んでいる。直線で花を描いたような装飾。提灯や抑圧を直線で描いたような装飾。
門の向こうには薄暗い通路がある。通路の先には扉があり、扉の先にはまた別の門が見える。それぞれの門は同じ装飾のようだったが、扉はまた異なる様式で作られていた。一番奥で控えている門を構える壁が一番白い。
三
地面は小石がタイル状の模様になってひかれている。折り戸は暗い影に覆われている。折り戸にはめられている窓は別の風景を映してかすかに輝いている。折り戸と折り戸の隙間に一本の木が見える。地面から垂直に伸びて、思い出したように少し左に曲がって、そこから斜めに空に向かって伸びている。ところどころ節のある木、葉は少なく枝も少ない。上に伸びていくにつれて枝葉を増やしていった。葉の向こうには空が見える。ここの壁は白い面積が多く、うっすらとと汚れもある。壁の上は茂みに覆われていて、その先にはやはり空からの光が見える。
四
庭の隅で竹が六本群生している。細いわりにしたたかそうな竹で、釣り竿にできそうな竹だった。手持ち花火のように竹の上部は枝や笹が四方八方に伸びている。
竹は光に照らされて、後ろの白い壁に柔らかい影を落としている。その上にはくっきりと屋根の影が映る。少し左に行こうものなら、別の屋根の壁に覆われて暗くなっている。もう一方の壁は日当たりが悪いのか、やはり汚れに侵食されている。