novel

1st短編集-回晩行

悩みながらも進もうとする意思が見える、初期衝動や磨かれていない作風が好きな方におすすめ。大学生の時に初めて作った短編集。

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1st短編集-回晩行

ミニ短編集-砂漠

2nd短編集-至暗面呼

3rd短編集-旅のような庭

回晩行remix

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 「ところでコード支払いってできますか?あっできない?できないんですね……。現金あったっけな……これでお願いします、はい、はい、ありがとうございました」「お客さん、忘れ物ありますよ」「おっと失礼、ありがとう!」タクシードライバーは紙袋を差し出し...

まどろみの下垂れ

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■ これが最後、だと思ってもいつも最後にならない。最後の後に最初があり、それがずっと続いている。テーブルの上のグラスに帯状の光が刺している。グラスの底に光が溜まり、水が光をテーブルに散らす。それを手で取りそこねてグラスは倒れて転がり、床に落ちて...

Escalator//bay side line

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 まどろみから意識がさめると海があった。    いつのまにかうたた寝をしていたようだった。隣ではミナミが本を読んでいる。「何の本?」「詩集」波の音がする。満ち引きのようにまどろみが押しやってくる。それにあらがうように、もう一...

Donuts holl,fly away

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 あらゆる音が途絶えたのは、松山の高校の音楽室にあるコンセントが抜かれたからで、コンセントが抜かれたのは少年がギターの練習をしようと思ってからのことだった。 少年は生真面目な性格で、きっちり二十二時に就寝して六時に目覚める。校門が開く七時半には...

友引

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     一七助は幼い頃から無口で臆病で心優しい奴だった。七助はとにかく汚れたものを嫌っていた。ただ汚れている物や、下劣なもの、煙草を吸う少年、理由もなく同級生をいびる教師、それらに口出しをしない彼自身を嫌っていた。七助の向かいの家に住んでいた...

思想の姦通者

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 血は肉の隙間から自然と湧き出し、肉をつたって円をくぐり抜け、垂れ落ちていく先は別の円。そうしているうちに、廊下を歩く音が聞こえて、扉の前で立ち止まり、扉が開いてあいつが入ってくる。私の姿を見て立ち止まったのを感じる。「気にしないでいい、入って...

菓子折り端折り

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 その病院は掃除が行き届いていたので、靴の音がよく響いた。その日に順子が持ってきたのは二つのリンゴだった。 数日前に小学五年生になる息子の洋太が骨折をして入院をした。サッカーチームの練習中の事故だったらしいが、夫は「男がその程度で骨折するなんて...

口辺に密

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    一 始めに結論づけておく。「言葉なんて本当はどうでもいいんだよ」彼は彼女の顔を直視できずに、声だけに注意深く意識を張っていた。けれど彼女の表情は然として穏やかなものだった。「言葉が無ければ嘘も無い」 彼は本当にそうなのだろうか、と考えて...

夜行

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 ヨリソとトマリの見合いは奇怪な形式で行われた。トマリの屋敷の奥の部屋、始まりは二十二時を回り、月光を廃するためにふすまは閉ざされ、蝋燭の明かりの一つで行われた。山代家からはトマリと母が並び、後から河村家のヨリソとその母、女中がやってきた。ヨリ...

72時間後のソープオペラ

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 リビングテーブルに飾られた花瓶の中のレタスを見て、「なんだこれは」と言ったのは浦田だった。「ドラマの受け売りです」と楽しげに峰子は答える。峰子は掃除機をかけるのにいそしんでいた。大きな音の中でも、峰子が何やら口ずさんでいるのが聞こえる。浦田は...

dehaze