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2nd短編集-至暗面呼

より深く、強度のある物語を探究した内省的な一冊。暗い面からの呼び声に耳を澄ますという、一貫したコンセプトで読み応えのある短編集。

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1st短編集-回晩行

ミニ短編集-砂漠

2nd短編集-至暗面呼

3rd短編集-旅のような庭

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今 紐で口を縛り、しっかり結び、余剰をペンチで切ると、土嚢は音を立てて倒れる。それを土嚢の壁の上に積み上げる。それからまたスコップを土に突き立てる。麻袋の口を広げて、スコップで土を入れる。一掻き、二掻き、三掻きほどで土嚢が出来上がる。紐を引っ張...

水子結納

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 年号が変わって雨があがったあと、曽祖父が死に、姉が妊娠したという連絡が来た。それで私は夏の始めごろに、家に帰ることにした。 私はひんやりブルーな気持ちだった。姉とどう関わればいいのか。幼い頃は仲良かったはずが、いつからか会話が減っていき、気ま...

盛り場は海

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 この峠を越えれば、視界が開けるはずだった。俺は一人で歩いていることに気づいて振り向くと、つぐみは屈んで靴を片方脱いでいた。それをひっくり返すと小さい石ころがころがり出てきた。音を立てて落ちた。一瞬、つぐみが俺を見上げてから、靴を履き直した。 ...

サービスエリアで

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 グライダーのような音で目が覚めた。輪郭がぼやけているが、はっきりと目に刺さる光が見えた。ゆっくりと意識を起こすと、外からの光だった。サービスエリアについたようだった。わたしの右隣にいるスザキはいらだちを隠して平然を装っているような顔をしていた...

ミツメ

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 見上げると洗面台の下が汚れていた。緩くカーブしたふくらみのてっぺんに横一直線、カビが生えていた。歯磨き中に垂れたよだれを拭い、ふと見上げなければ良かったのに。 なにか探してるの、と背中越しに母親の声が聞こえた。ソナンは別に、なにも、とぶっきら...

サルベージをナビゲート

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 入水案思案中のシアン君、こらえきれずに入水した。目黒川を流れに流れて太平洋の底へ。もうなにも望んじゃいなかった。ただただ深い水底で滅びたいだけだった。あらゆるものが流れるままに流され、そこで終えられると思い切ってた。ところがそうはいかなかった...

死すれば名も花

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 フミはちょっと不機嫌だった。平和な学校だった。しかしフミには平和すぎた。音楽の授業でギターを弾きながら考える。学校の人らはみんな気持ちのいいあいさつをする。みんな授業が始まる五分前にはピッタリ座って準備ができている。仲良く弁当を食べ、協力して...

リサの服捨て

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 アパートの部屋の窓から、向かいの銭湯の女湯の窓が見える。アパートの女人限定にもワケがあったのだ。 きまって土曜の昼前、おまえは女湯にやってきた。わたしはその時になると、白いワンピースを着て、窓辺にスコットランド製のアンティークのイスをひっぱっ...

涅槃猫と放浪犬

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 涅槃猫はふわふわグレーで尻尾は黒いデブ猫。ふてぶてしい顔と態度がとてもキュート。いつも家のあったかい場所を探し探し、呑気にあくびなんかしてる。悩みがなさそうでいいなと主人は思ってる。けどネハン猫だって、たくさんのことを見てきた。主人の人生のち...

殺し文句に逃げ口上

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 とある夜、とあるバーで平尾は一人の男と遭遇した。平尾はその男と酒を飲み、特におおごとになったわけないが、平尾が後から振り返るに、彼自身の人生の中でも数えられるぐらいの、とても重要なことがそこで起こっていた気がしてならなかった。とにかく素晴らし...

dehaze